インバウンド向けの多言語サイト——翻訳では足りない理由
多言語対応というと、日本語ページを翻訳する作業だと思われがちです。ただ、日本語ページは日本の宿泊習慣を知っている人向けに書かれています。それをそのまま訳しても、前提を共有していない読み手の疑問は解けません。
海外のお客さまが知りたいこと
日本語ページには書かれていないが、海外から予約する方が確認したい項目があります。
- 風呂の入り方——共同浴場に入る手順、身体を洗ってから湯に入ること、タオルの扱い
- 刺青の可否——入浴の可否は、予約前に確認したい項目のひとつ
- 食事の内容と時間——何が出るのか、時間が決まっているのか、部屋食か
- アレルギーと食事制限——対応できる範囲。ベジタリアン対応の有無
- 部屋の様子——布団を敷くのか、ベッドか。就寝の準備を誰がするのか
- 行き方——最寄り駅からの手段、送迎の有無、所要時間
- 支払い——使えるカード、現金が必要か
これらは日本のお客さまには説明不要なので、日本語ページには書かれていません。翻訳だけでは、この情報が欠けたままになります。
機械翻訳では足りない部分
機械翻訳の精度は上がっており、説明文の大半は実用に足ります。問題は精度ではなく、訳す元の文章に必要な情報が入っていないことです。
また、館内表記や注意事項は、直訳すると意味が通らないことがあります。「大浴場」「湯あたり」「夕食は18時から」といった表現は、背景の説明を添えないと伝わりません。
どの言語から始めるか
全言語を一度に用意する必要はありません。まず英語を整えるのが基本です。英語圏以外からの旅行者も、日本の宿を調べる際には英語ページを読むことが多いためです。
そのうえで、自館の実績を見てください。予約サイトの管理画面で、どの国からの予約が多いかが分かります。繁体字か、簡体字か、韓国語か。実績のある言語から足すのが確実です。
予約まで英語で完結するか
見落とされやすいのが、予約エンジン側です。紹介ページが英語でも、予約画面に進んだ途端に日本語になると、そこで離脱します。お使いの予約エンジンが多言語に対応しているか、確認してください。
対応していない場合、当面は問い合わせフォームやメールで受ける形になります。その場合も、返信の手順を決めておかないと現場の負担になります。
現場の負担を先に決めておく
多言語サイトを用意すると、海外からの問い合わせが増えます。誰がどう返すのかを決めないまま公開すると、対応しきれずに機会を逃します。
定型の返信文を数パターン用意しておく、対応時間を明記しておく、電話は受けずメールのみとする。運用の形を先に決めてから、ページを作るほうが続きます。